いろは匂へど

 

2019.1.10読了

『いろは匂へど』瀧羽麻子

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以下のあらすじを読んだら、どうやら登場人物の名前が『源氏物語』から取られているようだったので、『源氏物語』の次に読むしかないと思った。

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読んでみると名前だけでなく、内容も『源氏物語』をしっかりと下敷きにしていた。

特徴的なのは名前だ。

主人公の紫とその相手である光山は、言わずもがな紫の上と光源氏である。

そして『源氏物語』を引き継ぐ登場人物、藤代(ふじよ)。藤代は藤壺だ。

この3人はわかりやすく名前を引き継いでいる。

 

そして、この3人以外には名前に漢字を与えられていない。

 

紫に恋する外国人、ブライアン。

行きつけの店の店主であり、それぞれの恋路を見守るオーナー。

終盤に登場するエリナ。

 

見事に全員カタカナだ。ブライアンは外国人だが、エリナはどうとでも漢字を与えられる。

しかしそれをしない。

そこに『源氏物語』を引き継ぐ者と、そうでない者の差別化があるように思える。

 

物語は主人公の紫、ブライアン、光山、藤代の4人が主軸となり、まったりと進んでいく。

源氏物語』の三角関係にブライアンが加わる形だ。このブライアンがいい緩衝材になる。

ブライアンがいなければ、ここまでまったりとした印象ではなかったかもしれない。

紫の上と光源氏藤壺が同じ土俵に立っているのだ。ドロドロしてもおかしくない。

それをブライアンという緩衝材を置くことで上手く回避している。

 

ブライアンとは対照的に着火剤になるのは終盤に登場人物するエリナ。

エリナが登場してから、いままでまったりしていた雰囲気がガラリと変わる。急加速で物語が進んでいく。とくに「蘇芳」の速度感には驚いたし、全体的にまったり進んでいたからかなり目立つ。

スプラッシュマウンテンに似ているかもしれない。

 

そして最後はまたまったりした雰囲気に包まれ終わっていく。

 

 

最後に『いろは匂へど』というタイトル。

光山が草木染めを生業としていることで話題に上がる”色”

紫が好きな色であり、思い入れのある色である”紫色”

そして”色気” ”好色”など恋愛を連想させるものとしての”いろ”

『いろは匂へど』は「恋愛要素は匂うけれど」

という意味が込められているのではないだろうかと勘繰らずにはいられない。

 

 

また、京都の道の描写が多いので、京都の地図が頭に入っていたらもっと楽しめるだろう。

京都に旅行に行く際にはバッグにいれておきたい作品だ。