西洋菓子店プティ・フール

 

2019.4.3読了

『西洋菓子店プティ・フール』千早茜

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Twitterで呟いた通り、積読の中から『西洋菓子店プティ・フール』を選んだ理由は

ケーキ屋の話だから穏やかだろう

という浅はかな理由だった。そしてそれはすぐに裏切られた。

 

『西洋菓子店プティ・フール』は6作の短編から成る。

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それぞれ視点が切り替わるので、あの時、別の人物がどのような心情であったかが描かれていたり、別の話で主人公だった人物が脇役で登場したりする。

物語のピースが少しずつ埋まっていく感覚。

 

『グロセイユ』は亜樹が学生時代を回想する。

その中で亜樹が親友、珠香の怪我を手当するシーンを読むのに体力が必要だった。

こういう生々しい血の描写が昔からどうも苦手だ。 サスペンスの血は平気なのに、医療系はどうしても直視出来ない。

生きている血がだめなのだろうな。

 

『ヴァニーユ』を読んでいる時は、バニラの匂いを吸い込みたくなる。これから読まれる方には是非バニラの香りを纏ってから読むことをおすすめしたい。

個人的には、香水ならJILLSTUARTのヴァニララストオードパルファン、ボディクリームならLalineのクリームソフレを勧めたい。

どちらも重たいバニラの香り。

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最後の『クレーム』ではいつの間にか涙が頬を伝っていた。

感動したというよりは、ショックと緊張と心配と不安と安堵と、色々な感情が押し寄せて頭が処理しきれないのに、感情ばかりが先行して感受してしまっている涙。

 

ラストはほっとし、前を向ける終わり方で締めていて、とても後味がいい作品だった。