孤独な夜のココア

 

2020.1.6読了

 

『孤独な夜のココア』田辺聖子

 

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田辺聖子は、古典の現代語訳のイメージが強く、それ以外のものがあるとは知らなかった。

 

『孤独な夜のココア』とはなんとも寂しく、それでいてあたたかな印象を受けるタイトルだけれど、収録されているどの作品にも『孤独な夜のココア』というタイトルを持つ作品はない。

 

解説にある通り、収録された全ての短編を合わせて『孤独な夜のココア』なのだ。

 

印象に残ったのは「春つげ鳥」「おそすぎますか?」「怒りんぼ」の3編。

 

この3編に限らず、収録されている全ての短編は、どれも女性の主人公の視点から語られる恋の話。

 

過去の恋や、現在進行形の恋。

恋の始まりと終わり。

本妻もいれば愛人もいる。

 

さまざまな恋の形を垣間見る。

 

全ての短編を読み終えたときに、もう1度タイトルを読み返す。

すると、一人暮らしの部屋で1人、眠れないのか深夜に温かいココアを作って飲んでいる女性の姿が思い浮かんだ。

過去の恋愛を思い出しているのか、なんとも言えない表情でココアに口をつける女性。

 

私にとっての『孤独な夜のココア』はそういう作品だった。