3センチヒールの靴

 

2019.3.6読了

『3センチヒールの靴』谷村志穂

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なんだかアンニュイな雰囲気の女性が靴を履いている表紙。

この表紙に引き寄せられた。

 

表紙を開き、目次を見ると、決して厚くない1冊の中にこれだけの物語が収録されている。

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頁数を見てもらえれば、それぞれの物語はとても短い、ショートショートであることがわかる。それでもこれだけの物語が収録されているので、充足感がある。

 

物語は全体を通して気鬱な雰囲気を漂わせている。靴を履くアンニュイな女性が表紙に相応しい内容だ。

 

たくさんあるショートショートの中で印象的だったのは『赤と白のワインの空き瓶』『欅通りのカフェ・テラス』『Do you still Love me?』の3作品。

 

『赤と白のワインの空き瓶』は友人宅にあった赤ワインの空き瓶から、友人と恋人の裏切りを知ってしまう話。

本妻と愛人は同じように扱うべき。確かにそうなのかもしれない。しかし、この物語でそれが諸刃の剣だと証明される。

そもそも浮気をしなければよいのだけれど。

最後に主人公が引越し先で「禁断の赤」を飲むシーンがアンニュイな中にもカラッとした心地良さが混ざり素敵な余韻を残していた。

 

 

『欅通りのカフェ・テラス』は結婚を控えた友人の婚約者と会うことになり、その婚約者が幼馴染で、主人公に初恋を抱いていた男だった話。

それまでの物語が失恋をメインにした話が多かった中、失恋そのものがメインになっていなかった。友人が主人公と婚約者の仲を疑うけれど、当人達には全く後暗い所はなく、むしろ2人とも友人を大切に思っている所にぐっときた。ラストシーンでは友情と愛情を一緒に味わうことができる。

 

 

『Do you Love me?』は主人公が初恋の男の子に再会する話。

正確には作中でしっかり再会はしていないのだけれど、これから2人の初恋に再び動き出しそうな希望のある余韻がある。

 

 

主人公達の日常がリアルすぎて、自分の生活を覗き見られているのではないかと疑ってしまうほど。働く女性は誰しもこのような生活を送っているのだと、再認識させられた。