奥様はクレイジーフルーツ
2019.6.28読了
『奥様はクレイジーフルーツ』柚木麻子
夫とのセックスレスに悩む初美。
前半は行き場を無くした性欲を持て余す、初美の暴走っぷりに思わず笑ってしまう。
けれど、どれだけ妄想が暴走しても初美は決して夫を裏切るようなアクションは起こさない。
誰とでもいいわけではない。
そんな初美に好感が持てる。
セックスレスが初美の悩みから夫婦の問題になっていく過程がなんとも切ない。
愛がないわけじゃない。
仲が悪いわけでもない。
それでもできない。
初美の同級生、羽生ちゃん夫婦のようにハッキリした原因もない。
だからこそ苦しい。
夫婦の在り方とは。
セックスは本当に必要なのか。
そんなことを考えさせられる。
また、読み進めているうちに先日読んだ『きのう何食べた』3巻での「結構彼氏のこと大事にしてるよね」と言われた時の筧の台詞を思い出した。
「そりゃ大事にもしますよ」
「だって今あいつと別れたらたぶん俺の方がダメージでかいですからね」
「(中略)はっきり言ってめんどくさい!!40も半ばのこの年で一から恋愛するなんてめんどくさくてもう俺は嫌なんだ!!だからあいつとは絶対に別れたくないんです!!」
一見、愛があるのかないのかわからない台詞のようだけれど、長年連れ添っているとこのような感覚になるのもなんとなくわかる。
けれど、このような台詞は愛がないと言えない台詞ではあるまいか。
結局は、今のパートナー以外と添い遂げたい、だから大切にする。という決意表明のようにも感じる。
まだ私は独身なので、夫婦生活云々については想像しか出来ないけれど、いつか実感を伴いながら『奥様はクレイジーフルーツ』を読める日が来るのだろうか。