人間失格

 

2019.8.3読了

人間失格太宰治

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プレミアムカバーの箔押しが美しかったのと、今度の蜷川実花監督作が『人間失格』なので読んでみた。

 

内容は以前、生田斗真主演の映画を見ていたので把握していたのだけれど、原作を読むのは初めて。

 

改めて原作を読むと、映画程には陰鬱さを感じなかった。

淡々と己の性分を嘆いているようでもありつつ、どこか他人的。

結末としては悲劇的だけれど、なんとなく喜劇とも取れるから不思議。

これもお道化なのかしら。

 

本文の中で「世間」について語られるところがある。

これがとても印象的だ。

 

「世間とは一体何の事でしょう。人間の複数でしょうか。どこに、その世間というものの実態があるのでしょう。」

「(それは世間がゆるさない。)」

「(世間じゃない。あなたが、ゆるさないのでしょう。)」

 

真理だと思った。

世間という大きい言葉を使えば優位になるという浅ましさ、それに気づいていない下劣さ。

そんな有象無象に怯えなければならない臆病さに嫌気がさした。

 

けれど、今日もその有象無象のご機嫌取りをせねばならぬ。

それが自身の安寧を守る近道なのだから。