人間失格 太宰治と3人の女たち
2019.10.1鑑賞
大好きな蜷川実花作品。
言うまでもなく映像はとても美しかったけれど、今作で印象的だったのは色の変化。
太宰の晩年にいくにつれ、だんだんと使われる色が減り、またその色の彩度が落ちていったような気がする。
もしくは、その女たちが持つ色、色彩なのかもしれない。
女たちの色に染まる太宰は白。
そして、死の色の赤。
また、印象的だったのはマリア像と歪んだ十字架。
静子の家にあったマリアがイエスを抱いている絵。
静子自身もマリアに寄せて治子と写真を撮ったことからも、静子は聖母マリア。
そして、富栄の家にあった歪んだ十字架。
それが最も印象的に画面に映り込むのは、太宰にキスされ、元夫かしら??の写真に謝るシーン。
そのシーン以降、富栄が元夫のことを気にする素振りをみせないのは、何故なのか。
キリストのように元夫の嫁としての富栄は死に、太宰の愛人として復活したということなのか。
それとも、そのあと富栄がだんだんと狂っていくのが、元夫の呪いと言うことなのだろうか。
十字架は呪いを連想させるから。
または、富栄が自分に課した十字架なのか。
十字架が歪んでいるのは、富栄の歪んだ愛情を表現しているのだと思うのだけれど。
また、静子と富栄がキリスト教を連想させるモチーフがあるのに対して、正妻である美知子にはそれらが見受けられない。
太宰にとって、愛人とは宗教のように救いを求める、縋るべきものと言うことだろうか。
『ダイナー』は売切れでパンフレットが買えなかったけれど、『人間失格』は在庫補充のあとだったようで、迎えることができ、写真の美しさを見ては、恍惚としている。