コンビニ人間
2018.9.25読了
趣味を見つけようと一念発起し、最初に読んだ作品。
この作品を選んだのは、話題だったから。
とりあえず、まずは話題のものを読んでおけば間違いないだろうと思ったからだ。
そして、その判断は正解だった。
作中全体を通して、無機質な印象を受ける。
嗅覚、味覚、聴覚。コンビニ店員として必要なものだけを事務的に取捨選択しているような。
しかし、コンビニについては「透明な水槽」「光の箱」と、とても眩しく、鮮やかに描かれている。まるで世界の中でコンビニだけが色や光を持っているかのような印象。
そこに挙動不審な男、白羽が新入りバイトとして、古倉のコンビニに現れる。
白羽の言動は奇怪で、コンビニ店員を蔑んだり、客やバイト仲間に「婚活」としてストーキングしたり、なにかと原始時代を持ち出して持論を語ったりと理解に苦しむものがある。
それに対し、ほぼ毎日シフトを入れ、真面目に淡々と仕事をこなす古倉は真面目そのものな”普通の人”。
さすがに白羽の挙動が不審すぎるため、バイトはすぐにクビになり、コンビニは「修復」する。
しかし、古倉と白羽が再開し、同棲を始めるとこの2人の対比が逆転する。
感情がかなり乏しく、人間味のない古倉。
食事すら、食材を茹でるだけで到底料理とは言えない代物。食事というよりも、生命維持の為の餌のよう。
それに対し、白羽はただ「ムラ」という見えない抑圧に囚われた人間味のある人物であるように描かれる。
古倉の妹に白羽が応対したシーンでは、かなり真っ当な”普通の人”である。
普通とは何か。普段はスルーしてしまうことに疑問を投げかけてくれる貴重な1冊だった。