本屋さんのダイアナ
2018.10.24読了
『本屋さんのダイアナ』柚木麻子
『本屋さんのダイアナ』を読んでいる時、病気が見つかり、何もしなくても涙が止まらなかった。
しかし、この作品を読んでいる間だけはとめどなく溢れていた涙が止まり、病気も忘れて夢中で読んでいた。
もう病気は完治したけれど、私にとっては恩人的な作品。一生本棚に入れておきたい。
『本屋さんのダイアナ』は大穴(ダイアナ)と彩子の2人の視点から描かれている。
そして視点が切り替わる際に、2人の顔が記されているので、読者としてはありがたい。
金髪のダイアナ
黒髪の彩子
『本屋さんのダイアナ』の下敷になっているのは『赤毛のアン』。
『本屋さんのダイアナ』の大穴と彩子は、『赤毛のアン』のアンとダイアナを入れ替え、現代日本に置き換えた構図になっている。
小学校3年生に進級するところから物語は始まり、大学卒業の年頃までの2人を描いている。
小学生の2人は何をするにも、どこに行くにも一緒で、シングルマザーの家庭であるダイアナの父親を探しに一緒に競馬場まで行ってしまうほど。
とはいえ、大穴と彩子が一緒に行動するのは小学生の間のみで、2人がそれぞれの中学に進学する前に決別してしまう。
進学した2人はそれぞれの道を歩み出す。
街で偶然すれ違っても挨拶どころか、目線さえ合わせない2人。
もはや、このあと2人の人生は交わらないのではないかとさえ思うほど。
しかし、互いに親友への思いを断ち切れずにいる。
しかし、ダイアナが父に再会する機会を設けるのはやはり彩子だった。
フォロワーさんが仰っていたように、変化する心情や、危うくなる関係の描写が上手い柚木麻子だからこそのラストは必読。